ウールはカーボンニュートラル その2
ウールは二酸化炭素の貯蔵庫
植物は二酸化炭素を吸収しているのか?
植物は空気中の二酸化炭素と水そして太陽光を使って”光合成”を行うことで動物が生きていくのに欠かせない酸素と養分(糖)を生み出します。しかし一方では呼吸もするので酸素を消費し二酸化炭素を排出しています。夜間はもっぱら呼吸だけを行っています。では全体として二酸化炭素の収支はどうなっているのでしょうか?それを表したのが下図(イメージ図)です。樹齢が若い間は成長に必要な糖分を生み出すためにせっせと光合成を行うため、呼吸による二酸化炭素排出量を光合成での吸収量が上回っています。しかし樹齢を重ね成長が鈍るにつれ光合成による吸収量と呼吸による排出とが拮抗するようになります。つまり日々成長する草や若い樹木だけが環境中の二酸化炭素削減に大きく寄与しているといえるでしょう。もっとも老木は成長過程で取り込んだ二酸化炭素を抱え込んでいるため、生分解したり燃やされたりして再び空気中に二酸化炭素を放出するまでは二酸化炭素の貯蔵庫(CCS:carbon capture and storage)として機能しているといえます。
ウール1kgに二酸化炭素1.8kgが貯蔵されている不思議
羊は体の成長に必要な炭素を牧草(糖)を食べることで得ています。ウールの重量の約半分は炭素で出来ていますのでウール1kgの中に炭素は0.5kg含まれていることになります. 光合成を化学式で書くと下図のようになります。原子や分子は1個では軽すぎるため、アボガドロ定数個(約6×10^23個)集まった時の質量を原子量又は分子量として表しています。炭素の原子量は12(g)、二酸化炭素の分子量は44(g)です。
下図の糖に含まれる炭素を0.5kg生成するには二酸化炭素をどれくらい光合成で吸収すればよいでしょうか。計算すると0.5kg×44(CO2の分子量)/12(炭素の原子量)=1.8kg となります。 いいかえるとウール1kgの中には二酸化炭素1.8kgがギュッと凝縮して固定されていることになります。 この二酸化炭素は樹木と同様、生分解するか燃やされて再び空気中に放出するまではウールの中に固定されていることになります。ウールの衣類は大切に長く使えばそれだけ長期間、二酸化炭素の貯蔵に貢献することになりますね。
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