ウールは汗をかいても快適
ウールは肌離れ性が良い素材です
汗をかいたとき、衣服が濡れて肌に貼りつくと、気持ち悪いですよね?
この「肌に貼りつく感じ」は、その時の発汗量と衣服の素材特性に左右されます。少量の汗なら吸収しさらっと感じるけれど多量の汗だとべとつくという素材もあれば、汗を素早く吸収して放出する素材もありますし、すぐに濡れて肌に貼りつく素材もあります。以前にご紹介した通り、ウールは「水を弾く」「水を吸う」という相反する性質を合わせ持っています(「ウールは“蒸れないのに水を弾く”不思議」「ウールは“水を弾くのに水を吸う”不思議」の記事参照)。ですので、他の素材に比べると表面が濡れにくく、肌に貼りつく不快感の少ない素材です。また、ウールの表面はスケール(うろこ)で覆われ凸凹があるため、表面が平滑な素材に比べて肌に触れる面積が少なく、その意味でも「さらっとして肌離れ性が良い素材」と言えます。
ウールは、セーターなど冬のあたたかいニットのイメージが強いですが、制服やスーツ、そして最近ではカットソーやインナーにも使われています。インナーやスポーツウエアなど肌に近い衣服にウールが使われていると、汗をかくシーンでも快適に過ごすことができます。
なお、肌離れ性は布の組織も大きく影響しますので、肌との接触面積が少ない布の方が肌離れ性は良くなります。
肌離れ性を評価する装置を開発しました
日本毛織株式会社(ニッケ)では、この肌離れ性を評価する試験装置「肌離れちゃん」(左下写真)を開発しました。濡らした布を模擬皮膚の上に乗せて、それを引っ張ったときの最大摩擦力を測定して評価します。この装置で測定した結果、ウールは他の素材に比べて最大摩擦力が小さい、つまり肌離れ性が良い素材であるということが証明できました。なお、最大摩擦力と実際のべとつき感(官能評価)は右下グラフの通り相関が取れており、装置の妥当性は確認できています。
本研究については、大阪大学 秋山庸子准教授とさらに深い研究も行っています。