驚異の消臭力 その1(消臭メカニズム)
ウールの消臭メカニズム
ウールには天然の消臭効果があると云われています。そのために何日も洗濯できない登山用のインナーやソックスにはウール製品がよく使われています。またアメリカでは ”100日間洗わなくても着られるシャツ” というキャッチフレーズのウールシャツが商品として 売られていたりします。
ではウールはなぜ臭わないのか、どれぐらいの効果があるのかをお話したいと思います。
物理的消臭と化学的消臭
消臭には物理的消臭と化学的消臭の二つがあります。物理的消臭は活性炭のように膨大な表面積がある物質の表面にファンデルワールス力で臭い分子を引き付けるものです。化学的消臭には臭い分子と化学的に結合する場合と、光触媒のように臭い分子を破壊して別の物質に変えてしまう場合があります。 物理的吸着は臭いの物質を選ばない(いろんな臭いを吸着できる)半面、条件により(温めるなど)臭いを再放出することがあります。化学的吸着は吸着できる臭い分子が限られるかわりに一度吸着すると再放出しにくいという特徴があります。物理的吸着は多かれ少なかれ、あらゆるせんいに起こります。合成せんいでもその表面にある程度は吸着しますが、内部に空隙のある天然せんいの方が吸着量は多い傾向にあります。
ウールの化学的消臭のメカニズム ~ウールは両刀使い~
一番気になる臭いといえば汗の臭いなのではないでしょうか。汗そのものには臭いはないそうですが皮膚の細菌が汗を分解する際にアンモニアや酢酸などが生じてそれが臭うもとになるのです。
ウールには化学的消臭機能が備わっています。臭いの分子は湿気(水蒸気)と同様に分子サイズが小さいためにキューティクルの隙間からコルテックスに入ることができます。コルテックスにはアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)という反応基があります。アミノ基には酢酸のような酸性臭が、カルボキシル基にはアンモニアのようなアルカリ臭が化学反応してしっかりと結合します。化学的吸着をするせんいは他にもあます。例えば綿は酢酸臭と化学的吸着して消臭しますがアンモニア臭はあまり消臭しません。ウールのように酸とアルカリといった両極の臭気を同時に消臭できるせんいは他にはないでしょう。
アンモニア臭や酢酸臭を吸着した織物の臭いを嗅ぐと、あまり消臭力がないにも関わらずポリエステルからは臭いがします。また大量に酢酸臭を消臭できる綿からは酢酸臭がしますが、ウールからはどちらの臭いもあまりしません。このことからウールは物理的吸着よりも化学的吸着の方が優勢なのだと思われます。
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