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ウールは海水中でも生分解する

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プラスチックによる海洋汚染は地球の浄化限界を超えた?

プラスチックの大量生産は1950年代に始まりました。私が子供のころ(1960年代生まれです)のおもちゃはまだ木やブリキ製品もありましたが、今ではすっかりプラスチックの製品に置き換わりましたね。コストが安く複雑な加工も容易で大量生産にも適しているから当然のことといえます。2016年までのプラスチックの累計生産量は83億トン、不用になったプラスチックは焼却・埋め立てそして海洋廃棄されてきました。私たちは海にプラスチックごみを捨てている自覚はあまりありませんが実際には世界中で年間800万トンが海に廃棄されており、すでに推定で1億5000万トンものプラスチックが海に蓄積していると考えられています。

サステナブルではないプラスチック

海洋に廃棄されたプラスチックによる被害はレジ袋をクジラやイルカが餌と間違えて食べて死んでしまったり、漁網に絡んだ生き物が死んでしまったりと枚挙にいとまがありません。更に紫外線や波の外力で砕けたプラスチックはマイクロプラスチック呼ばれる直径が5mm以下の回収不可能な状態になってしまいます。マイクロプラスチックを小魚が誤食することは生態系に大きな影響を与える結果になります。

本ブログの『ウールはサステナブルな繊維です。その1』に書いたサステナブルの定義をご参照ください。定義の3つ目に「汚染物質の排出量は環境の吸収量又は無害化能力を超えてはいけない」とあります。マイクロプラスチックはこの汚染物質に相当します。地球がこの汚染物質を無害化するのには数百年を要すると考えられ、年々蓄積量が増えている現実は地球の無害化能力を遥かに超えていることの証明です。

無害化の原点は「生分解」

有機物を無害化する最も効果的な方法は生分解です。微生物が有機物を摂取する段階で水や二酸化炭素といった植物が利用できる物質まで還元するからです。

本ブログの「夏休みの課題に!せんいの生分解実験のやり方」をご参照ください。土に綿やウールなどの天然繊維(レーヨンやキュプラなどのセルロースを原料とする化学繊維も同様です)を埋めると暖かく雨の多い4~6月頃だと1か月程で生分解して消えてしまいます。特に地上では草や木などのセルロースを分解する微生物が多いので綿の分解はとても早く進みます。このように何億年も前から地球上では生分解により、古いものは消え新しいものが生まれることが繰り返されてきました。

 

ウールは海でも生分解する

ウールが海水中でも生分解することの実証実験が2022年2月から神戸市垂水区にある神戸市立栽培漁業センターで行われました。稚魚を養殖する生簀の中にポリエステル100%のTシャツとウール85%/ポリエステル15%のTシャツを沈めて、24時間海水を循環させて生分解を観察するものです。水温の低い2月~6月頃にはいずれのTシャツも変化が見られなかったのですが水温が上昇してきた7月(150日後)にはウール85%のTシャツはすっかり生分解され、糸の芯部のポリエステルフィラメント(15%)だけが残りガーゼ状になっていることが観察されました。

下の写真左[ポリエステル100%Tシャツ]、右[ウール85%/ポリエステル15%Tシャツ]

家庭から排出されるマイクロプラスチック

ところで生分解速度が遅く、生態系への影響が大きいマイクロプラスチックの発生源として注目されているのが各家庭からの洗濯排水です。洗濯機のフィルターには洗濯するたびに意外なほどの毛屑がたまっていると思いますが、これはほんの一部でほとんどは排水とともに海に流れ込んでいます。毛屑には綿やウール、ポリエステルやアクリルなど様々な繊維が含まれています。ウールや綿などは海水中で生分解するのですがポリエステルやアクリルなどの合成繊維の毛屑は最初からマイクロプラスチックとして家庭から排出され海中を長く滞留することになります。

合繊メーカーは植物を原料とするプラスチック(二酸化炭素の抑制効果がある)の製造には成功しておりますが海水中で生分解するプラスチックの開発にはもう少し時間がかかりそうです。これが成功するまではなるべく天然繊維の素材を選んで買うこと、そして不必要な洗濯は控えることが二酸化炭素やマイクロプラスチックの抑制のために私たちができることなのではないでしょうか。

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