ウールはサステナブルな繊維です。 その2
ウールはサステナブルな繊維である
ウールがサステナブルであることの証明
ハーマン・デイリーの定義(「ウールはサステナブルな繊維です。その1」参照)に沿ってウールがサステナブルであることを検証いたします。
原則1
羊の毛は1年で10cmほど成長します。この毛は自然には生え変わらないため健康のためにもヒトが散髪(毛刈り)しなければなりません。毎年春に毛刈りを行い、羊が死ぬまで続きます。(平均寿命10~12年) 羊にも寿命がありますがこの営みは仔羊に受け継がれて連綿と続いていきます。 衣服に適した羊毛の採れるメリノ種(豪州やニュージーランドに多い)のほか、食肉用の羊でも毛刈りは必要です。日本の各地の牧場でも春になると毛刈りが行われます。私の最寄りの牧場「神戸市立六甲山牧場」では毎年4月に“羊の毛刈りショー”が開催されています。このような食用・観光用の羊の毛刈りは羊の健康のために行われています。ところで商業的に毛が利用されるメリノ羊でも毛刈りは年に1回です。理由は工業的に糸をつむぐ(紡績といいます)には5cm~10cmの長さ(繊維長)が必要なためです。むやみに毛刈りを行っても紡績できなければ意味がありません。羊が家畜としてヒトとかかわりを持ったのは一万年ほど前と云われています。羊の毛を衣類に利用するようになったのは少なくとも紀元前二千年(メソポタミア)ですから四千年以上も持続していることが何よりのサステナブルの証明と言えるでしょう。
原則2
ウールは再生可能な繊維なので自ずからクリアしていますね。
原則3
汚染物質の排出については製造工程で排出されるものと製品としての排出が考えられます。製造工程の排出については厳しい環境基準を順守することで公害問題はほとんど聞かれなくなりました。今最もフォーカスされているのは製品から排出されるマイクロプラスチックでしょう。衣類の場合、家庭から廃棄され埋め立てられた合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリルなど)は時間をかけて細分化され、回収不能なマイクロプラスチックとなり、その生分解には100年以上を要するといわれています。洗濯時に排出される毛屑もマイクロプラスチックとして直接に海洋を汚染しています。
天然繊維であるウールは土中では約半年でほぼ完全に生分解されます。海水中でも数年で生分解されることが確認されています。陸上にも海洋中にも羊毛の堆積が確認されていないことは、地球の無害化能力を超えていない証でしょう。
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