だけどウールは洗える
実はウールは水で洗えるのです
ウールを洗うと縮む原理を「ウールを洗うと縮む理由」で説明いたしました。ぬるま湯と洗剤、そして揉みの力が縮む(縮める)ための条件でした。この反対のことをやれば縮まないように洗うことができるのです。
まずは手洗い
防縮加工(縮まないように薬剤で加工すること)をしていない、通常のウールを洗うには何といっても手洗いすることが基本になります。防縮加工していないウールは表面のキューティクルが完全な状態で保たれています。表面は水を弾く撥水性で、通常はキューティクルは閉じた状態ですので汚れは表面に付着しているだけで中のコルテックスまで浸み込んでいません。ですから着用後に良く乾かして洋服ブラシを軽くかけるだけで表面に付着している汚れは簡単に落とせます。
このような日常のお手入れだけでは落ちない汚れがついてしまった場合には水で洗うことになります。ウールが縮む最大の原因は水の中で揉まれることです。繊維同士が擦れるように揉まない、つまり桶の中で押し洗いをすれば縮むことはありません。表面に付着しているだけの汚れや、汗などの水溶性の汚れはこれだけでもかなり落とすことができます。しかし油汚れなどの場合は洗剤の力が必要です。一般にウール用に推奨されている洗剤は中性洗剤です。汚れが落ちやすいアルカリ洗剤でないのは ”ウールが溶ける” からではなく、アルカリ性だとキューティクルが膨潤しやすく縮みやすくなるからです。中性洗剤は若干洗浄力が劣るため、油汚れの落ちやすいぬるま湯が推奨されていますが、汚れがひどくない場合は冷水の方が縮みにくいです。
シャワーでも洗える
”スーツの袖にジュースがかかった”ような部分的な汚れで押し洗いしてしまうと後の仕上げが大変です。このような場合にはシャワーで洗うという方法もあります。浴室などにスーツをかけ、汚れた部分にシャンプーを揉まないように注意してなじませてシャワーで温水を掛けてすすぐだけできれいにすることができます。ポイントは汚れ以外にシャワーを掛けないことです。スーツのように縫製が複雑なものは縫い目割の部分が起きてしまうと後でアイロン仕上げが必要になり手間だからです。少しの汚れのためにクリーニングに出すのはもったいないですよね。
ドライクリーニングのこと
水を使わないドライクリーニングはウールに最適と思われているようですが必ずしもそうとは限りません。脱脂力の強い有機溶剤で頻繁に洗うことはウールのしなやかな風合い(手触り)を損ねることになります。また有機溶剤は油汚れはキレイに落としてくれますが水溶性の汚れ(汗や尿、お茶など)を落とす力がないため、チャージソープという洗剤と少量の水を添加しています。衣類の縮みを抑えるためにチャージソープの量は限られているため水洗いほど水溶性の汚れを落とすことができません。また溶液の管理が不十分ですとチャージソープに水溶性の汚れが蓄積して再汚染(洗濯ものに汚れがつくこと)の原因にもなります。
しかしスーツのように仕上げが難しいものは着用シーズンが終わったらクリーニングに出してプロにアイロン・プレス仕上げしてもらうのがいいですね。また夏物のように水溶性の汗がたっぷりとついてしまったものはクリーニング店のウエット仕上げを指定するのも良いと思います。価格が少し高いですが専用の機械で縮まないように水洗いすることで汗汚れをサッパリと落とし、プロが仕上げてくれるので安心です。
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