ウールの“におい”の正体は?
ウール博士交代
今回より、ウール博士の執筆者が代わります。分かりやすくお伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
ウールのにおいの成分は主に2つ
ウールのセーターを手洗いしているとき、ふんわりと“におい”を感じたことはありませんか?この“におい”については永年の疑問でしたが、ついに“におい”の正体が特定できました。ウールから発せられる“におい”は主にノナナールとジメチルトリスルフィドの2つの成分から成っています。
ノナナールってどんなにおい?
ノナナールは、アルデヒドの一種です。花や果実の香りの成分で、バラや柑橘のにおいがします。また赤ちゃんのにおいの主成分でもあります。私は二児の母ですが、赤ちゃんの温かさを感じる甘いような、ちょっと脂っぽいようなにおいは癒しになっていました。これがウールにも含まれているわけですが、元々含まれる自然のにおいですので奥が深く、現時点では抑えることが難しいです。ちなみに男性の加齢臭で知られるノネナールとは別物です。
ジメチルトリスルフィドってどんなにおい?
ジメチルトリスルフィドは、硫黄化合物です。沢庵などの漬物食品や清酒の老香に含まれる成分で、新鮮なタマネギのようなにおいがします。これはウールの染色工程でウールの一部が損傷することが原因で発生するにおいですが、日本毛織株式会社(ニッケ)ではこのにおいを抑える処方を開発しており、発生しにくくしています。過去には、雨に濡れたウール製品を着用した人たちが密集すると強めの臭気が感じられましたが、この処方により解決し、今はその心配はありません。
家庭洗濯で感じるウールのにおい
ウールのにおいは、ノナナールの方がジメチルトリスルフィドよりも寄与率が高く、家庭洗濯などで出てくるにおいは主にノナナールです。においは濃度によって感じ方は異なりますし、においの感じ方や好き嫌いは人それぞれですが、ウールのにおいを感じたら、羊が育った大地や空気感に思いをはせ、癒されてみるのも良いかもしれませんね。
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